お盆が近づくと、亡くなった人のことを思い出す。
お盆の暑い昼下がりに、シャッターが下りたお店の前で立ち止まり、耳を澄ませて往時を偲ぶ。
私の実家の二軒となりに、生鮮食品や日用品を取り揃えた、夫婦経営の個人ストアがあった。小学生の私は、毎日のようにお使いに行っていた。
夏休みの暑い昼下がりに、アイスを買いに行くと、店番のおっちゃんがいない。いつものことだ。私はすぐに斜め前の散髪屋に走る。当時では、まだ珍しいクーラーがついていて、中でおっちゃんがよもやま話をしながら涼んでいる。
手を引いて店まで連れ戻し、レジ台にアイスと50円玉を置く。おっちゃんは黙ったまま、お金とアイス、そして私の顔を順番に眺め、「かまん持って帰れ~」と笑ってお金を突き返す。 そんなやり取りを、今では懐かしく、そして切なく思う。孫のように可愛がってくれて、一緒になって遊んでくれた。それなのに、何も恩返しができなかった自分を、今さら恥じる。
※ 投稿するが、落選した作品。